4月12日、昨年9月から始まったアルマ望遠鏡の科学観測の最初の成果がプレスリリースされました(僕はその広報担当なので、「されました」というのは変な感じですが)。リリース翌日にはYahoo!のトップにも掲載していただいて、NHK BSニュースでも流れたようなのでご存知の方もいらっしゃるかと思います。この研究の詳しい中身はリリース本文をお読みいただくとして、ここではアルマ望遠鏡以外の望遠鏡で見たフォーマルハウトの姿をご紹介したいと思います。
まず、今回リリースされたアルマ望遠鏡の電波観測画像とハッブル宇宙望遠鏡による可視光の画像がこちら。
ALMA (ESO/NAOJ/NRAO). Visible light image: the NASA/ESA Hubble Space Telescope |
- ここではハッブルの写真に青色、アルマの写真にオレンジ色を割り当てて疑似カラー画像を作っています。電波は人間の目には見えないので、実際こんな色で見えるわけではありません。
- ハッブルの画像:フォーマルハウト本体がまぶしすぎるので、マスクをしています(コロナグラフ:中央の黒くなっている部分)。中心部から放射状にのびている小さい粒々は、このマスクから漏れてくる光が映ったものなので、ここに実際にこんな構造があるわけではありません。
- アルマの画像:右側しかオレンジ色の部分がありませんが、アルマの視野が狭く、こちら側半分だけしか観測できていないので、こんな風になっています。きっと反対側の環も電波をだしていることでしょう。フォーマルハウトそのものも、強い電波を出していることがわかります。
過去の観測はどんなだったか。下の写真をご覧いただければ、喜びに打ち震える天文学者の気分も少しはご理解いただけるでしょうか。
"Fomalhaut Circumstellar Disk" Credits: NASA/JPL-Caltech/K. Stapelfeldt (JPL) |
17世紀初めにガリレオ・ガリレイが人類で初めて望遠鏡で土星を見たとき、「土星には耳がある」と観察記録を残したといわれています。土星にあるのは耳ではなくて環であることは、その後の望遠鏡の改良によって広く知られるようになりました。上のフォーマルハウトの画像もまさにそんな感じ。「耳」から「環」へ、ガリレオから約400年後の人類は電波観測で同じ道をたどっているのかもしれません。
実はアルマの画像がリリースされる前日、ハーシェル赤外線宇宙望遠鏡からもフォーマルハウトの観測結果が公表されました。アルマの広報担当とハーシェルの広報担当は別に連絡を取り合っていたりはしないので、今回ほぼ同時期にリリースすることになったのは全くの偶然。「なんてタイミングだ!」と世界中に散らばるアルマ望遠鏡の広報担当は一同とてもびっくりしました。
"Herschel spots comet massacre around nearby star" Credits: ESA/Herschel/PACS/Bram Acke, KU Leuven, Belgium |
何か結論のあるブログエントリではないんですが、いろいろな波長で同じ天体を観測することによって、たとえばその天体の温度を求めたりすることができます。アルマだけじゃなくていろんな波長を観測できるいろんな望遠鏡で宇宙を見ることで、よりたくさんの情報を引き出せる、ということです。このブログでも適宜そんな成果を紹介していきたいと思います。
※2012.04.18 追記
なんでSMAで観測しないんだろう、と思っていましたが、 感度が全然違うことを忘れていました。アルマの観測はフォーマルハウトを140分間観測した結果ですが、SMAで同じ時間観測した場合と比べるとノイズレベルが40倍くらい違います。SMAの感度では、この環の一番明るいところがさらに3倍明るかったらやっとうっすらと電波写真に写る程度。こりゃSMAで頑張る気にもならないですね。やっぱりアルマの感度はすごい。